今回はアメリカ合衆国の正しい太平洋戦争の終わり方と題して、戦争終結後アメリカが太平洋においてもっとも得をする状況とはどんなものかを書きたいと思います。

そのため大日本帝国の偉大な帝国海軍が活躍する事なんてありません。いや、寧ろ日本国民が彼らの不敗を信じている分、早々に退場願うことこそ太平洋戦争の終わりに近づくのですから出きるだけ早めに壊滅していただきたいほどです。

まあそう言っても凝り性の日本人が作っただけあって常備軍としては日本刀のような完成度を持っています。これを一撃で折るのは中々に一苦労です。下手をした場合こちらが重症を負う事態になりかねません。それはアメリカにとって好ましくない事です。なんとかしなければなりません。

まあともかく歴史的事実を追いながら問題を洗い出していきましょう。

 

太平洋戦争の発端は市場として巨大な極東アジアの争奪戦に過ぎません。大日本帝国が掲げる有色人種の自主独立など市場会得のための手前勝手な主張で、この点においてはアメリカ合衆国が掲げる民主主義も変わりありません。

両国ともに利益が出るから主張し、戦争に訴えるわけです。解放者や正義の味方も儲かるからやっているだけであって、なにも慈善事業の訳ではありません。国家という利益共同体は企業とはまた別の規模、つまり思想・宗教まで含めて利益追求を是とする最大・最強の組織です。だからこそ国家と言う枠組みが有史の時代から歴史の基準とされているのです。

そして大日本帝国・アメリカ合衆国は新たな帝国を築くためにこの市場を欲していました。極東アジアは多数の国とそれに関連する宗主国が存在しますが、そんなものは無視します。彼らは新たな帝国の誕生その生贄に過ぎません。

ここで帝国への発展を望む2つの国を見てみましょう。

 

まず大日本帝国。この国は強力な文化と経済圏を有する中国の近隣に存在する海洋国家と言う好条件の位置に存在しました。

そのため発展はいささか遅いものの一度国家としての体裁が整うと急速に力をつけます。ただ、国土がいくつもの山・海・川によって寸断されていることがこの国を国内志向にさせてしまい、何度か機会はあったもののついに近代に入るまで外へと拡張することは出来ませんでした。

そう言ってもそこに蓄えられた能力は外へと飛び出るとまさしく昇竜のごとき勢いで拡張を続け、有色人種として唯一の産業国家・列強として名を連ねる事ができました。

その日本が発展する理由となったのがなんと言ってもその地理位置です。南には東南アジアが、西には中華大陸が、東にはアメリカ大陸が、とおよそ巨大市場に囲まれている地理位置なのでした。北には凍った資源地帯シベリアもあります。また国土も山が多いことを除けば世界で一等地と呼べる場所で、降水量が高いため米を栽培でき、人口は工業国家としては十分な、というよりも寧ろ欧州国家を倍するほどの数字を確保できています。これで発達しない訳がありません。

民族的に凝り性だとか勤勉だとかはあまり関係ありません。ただ単に発達できる理由がマクロ的な見地だけでこれだけそろっているのです。

で、あるからこそ彼らが覇権国家として力を得るごとに孤立していくのは必然でした。なにせアメリカを除けば西欧列強より強すぎるのです。英国すら単独で上回る能力を持っていれば覇権国家として新たな帝国の創造という夢を持ってくる事は間違いありませんでした。

この夢を覆すのはよほど日本人にとって好都合な政治状況でなければ不可能でしょう。例えば戦争をしなくても巨大な市場を手に入れ続けることが可能と言う確信がある場合です。

無論、現実の日本は違いました。西欧列強は日本との対立姿勢を強め、日本は孤立することなり、市場を手に入れられない事にあせった日本は戦争に訴えようとしていました。

この状況にほくそ笑むのがアメリカでした。

 

アメリカもまた地理的に言って世界の一等地でした。この国がすごいのは日本が主に貿易地点としての能力に特化しており資源的には無資源国であるのに対し、アメリカは貿易地点としての能力と資源国家としての能力を両方兼ね備えている事です。

しかも貿易地点としての能力も大西洋と太平洋という2つの大洋のちょうど中間に位置し、これらの巨大な両大洋市場に接続できる事です。

これに資源国家としての能力が合わさる事によってアメリカは世界半分の工業生産能力を有するという事実を作り上げる事となったのでした。

ですが両大洋市場は共に潜在敵対者がいました。英国と日本です。言うまでも無くこの2国は大西洋と太平洋の物流、その中心となっている海洋国家でした。英国と日本の違いは16世紀において海外に拡張したかしなかったかの違いしかなく、もし日本も海外拡張していたならば歴史は随分と違った様相を見せていたでしょう。

まあ仮想史はともかくとして、この潜在敵対者がアメリカの覇権確立の邪魔となっていたのでした。なにせ両大洋市場をアメリカが支配する野心を見せれば反発されるのは目に見えていたからです。

それはある程度事実となりました。ロシアの南下政策に対して日本と同盟した英国は第一次世界大戦までの間、確かにアメリカに対する牽制として日本と同盟していたからでした。ドイツに構っている間にアジア市場をアメリカに荒らされないボディーガードとして日本は存在したのです。

この英国の予想は外れます。第一次世界大戦においてアメリカは逆に英国を支援する役目を果たしました。逆に日本は欧州には最低限の兵力しか派遣せずに寧ろ太平洋地域の利益を追求しました。泥棒役と護衛役が綺麗に交代した格好です。

当然ながら戦後の英国はアメリカに傾きました。日英同盟は破棄されます。

アメリカにとってはまさしく潜在敵が1つ消滅した事を意味すると同時に両大洋市場に対して攻勢をかける切欠となりました。

もしアメリカの覇権を押しとどめたいのであれば、日本と英国が同盟を結ぶしかなかったのですが、今やその防波堤は崩れ去りました。

そして日本はアメリカの敵対者としては甚だしく力不足でした。いやあの国土を有し、アメリカ大陸に有力な敵対者を有さないアメリカと言う史上最強の海洋国家と対立するのは如何なる国家でも不可能でしょう。これは史実における21世紀の超大国として予想される中国・インドとて変わりありません。

東南アジア市場を有する西欧列強が日本に対して強気だったのも護衛役としてのアメリカが当てにできたからです。ABCD包囲網などその格好の例でしょう。

それ以前でも包囲網は狭まり東南アジアとアメリカという2大市場を政治的には失った日本は困窮します。

シベリアは資源としてはあてにできますが、市場としては貧弱すぎます。と、なれば西へ中華大陸へと駒を進める事こそが日本に残された道である。そう考える者が続出し、それを制御できずに日本は大陸へと矛を向けます。満州事変と続く支那事変の始まりです。

アメリカにしてみれば日本は鼠で、2方向から追い詰められて後ろにある決して抜けない分厚い壁に牙を立てている、と言った所でしょうか。典型的な自滅です。

後は鼠が疲れきったところでさらなる暴発を誘い、大義名分を得た後でゆっくり料理してしまえば良いのです。

英国は戦間期にアメリカとの関係が冷えたものとなりましたが、復活したドイツとの対立ではアメリカの支援を必要としています。

第二次世界大戦そして太平洋戦争。両者が始まった段階でアメリカの世界戦略は完成していました。

もはや全ての用意は整っていたのです。日本が超兵器を使おうがなにしようと戦争が始まった時点で勝利などできません。政治的に敗北が決定していたからです。

新たな世界帝国の誕生は目の前であり、戦争はその陣痛に過ぎませんでした。

 

 

さて日本の必敗は決まっています。もはや決定事項です。そしてアメリカ合衆国にとってどの条件で太平洋戦争を終わらせる事が最適なのか?、という本題に入ります

史実の状態ではよくないのか?アメリカは完全勝利しただろ?

そう疑問に思う方も居るでしょう。そうなのです。アメリカにとって太平洋戦争は必ずしも目標とした利益の全てを手に入れられたわけではないのです。

アメリカは太平洋市場、特に東アジアと東南アジアを手に入れるために戦争を始めました。今までの戦略、その全てがこれを目標として組み上げられてきました。

ですが史実を見ると以下のような略表となってしまいます。

 

1945

2月 ヤルタ会談

412日 ルーズベルト死去

58日 ドイツ降伏

88日 ソ連対日参戦(満州国・北朝鮮損失)

815日 日本降伏

 

1946

5月 満州地方、国民党に返還

712日 中国で国共内戦

 

1949

527日 中華人民解放軍、上海を開放

101日 中華人民共和国成立(中華大陸損失)

 

簡単に言って中華大陸市場を完全に消失しているのです。これでは戦争目的が半分達成できていません。

なぜこのようなことになったのでしょう?日露戦争から永遠と気づいてきた国家戦略は万全だったはずです!

事態を追ってみて見ましょう。

まず2月のヤルタ会談。ここでソ連の参戦が決定されています。ドイツが陥落後急速に実現し、関東軍をソ連極東軍が圧倒する戦力を手に入れることなりました。ここでの戦力比は考えるだけで馬鹿らしい数字となります。

中華大陸と太平洋の島々で兵力を損失した大日本帝国陸軍と、アメリカのレンドリースでとにかく軍備ばかりに工業力を集中してドイツ陸軍を圧倒する戦力を整えたソビエト連邦陸軍との差は精神構造で埋められるレベルではありません。ましてや超兵器では絶対に無理です(だいたいそんな兵器を生産する工業力自体がない)。

そして満州国を陥落させたことによって共産主義勢力は一気に活気づきます。満州国は未完成とは言え日本的国家作成によっていかなる植民地国家よりも工業国家としての能力を備えていました。

超特急「あじあ」号と満鉄に代表される鉄道網。1941年時点で170万トンの銑鉄と100万トンの粗鋼生産力、42年には320万トンの生産力を持った昭和製鋼所に代表される製造業。降伏した関東軍が使っていた大量の装備。そして革命予備軍と呼べる漢民族。

極論するならば満州国が陥落した段階で中華共産党の勝利は決まっていました。彼らは重要な策源地を手に入れたからです。

ソ連がどれだけ満州国から資本を持っていこうとも満州には日本の投下した資本が残ります。それに戦争が終わった今、旧式装備ばかりの日本兵器などソ連には使い道が無い。中華共産党にやったところでなんの心配も無いのです。

それにソ連が支配していた19464月まで中華共産党は準備期間として使う事ができました。19465月、国民党に満州地方は返還されたがすぐにゲリラが活発化します。

そして新たな国共内戦、中華共産党の言うところの全国解放戦争、その初期において中華共産党の解放軍が使用する武器はことごとく日本製でした。

そして重要な策源地である都市部の資本家層を日本軍に荒らされていた中華国民党はアメリカの援助に頼るばかりに市民に人気が無く、ゲリラ戦によって疲弊したところを敗北し、ついに1949年には中華大陸を損失、台湾に落ち延びるしかなくなるのです。

 

以上が中華大陸を失うまでの経緯です。

アメリカとしては中華国民党をもって中華大陸を己が物とするはずだったのですが、完全に失敗しています。

問題点は言うまでも無くソ連対日参戦です。これをなんとしても阻止しなければなりません。満州国が陥落しなければ共産主義者たちに策源地を与えたりしません。

それにはどうすれば良いのでしょう?、というよりなぜ長年温めてきた国家戦略が途中でソ連と折半するはめになったのか?

世間で言われているようにフランクリン・D・ルーズベルトが共産主義者だったと言うのはあまりのも陰謀史観が酷すぎるというものです。まっとうな歴史趣味人としては窓から放り捨てるべきものでしょう。

恐らく理由となるのが太平洋方面における進撃の遅さでした。いや戦争指揮の不統一と言ってよいでしょう。

当時、海軍が主導する中部太平洋方面からの進撃と、陸軍が主導する南太平洋方面からの進撃の2つが進撃ルートとして存在しました。

海軍は二ミッツ大将が陸軍はマッカーサー大将が主導していました。両者ともに組織がどのような計画を持って戦争に挑んだか、その影響を受けていました。

陸軍は当然ながら陸地のあるフィリピンを重視します。なにせ陸軍が戦える主戦地と言ったら太平洋の島々にはそこしかないからです。

一方の海軍は輸送路すら絶ってしまえば海洋国家である日本が自滅する事を本能的に知っています。海軍とは輸送路を守るために艦隊を整えているだけですから。

日本帝国海軍は違うではないか、そう思う人も居るかも知れませんが少し違うのではないかと思っています。確かに艦隊決戦式の迎撃型海軍を作りました。ですが別に輸送路を少ない兵力で守れる、あるいは短期決戦で戦闘が終了すると考えたからではないでしょうか?。

日英同盟が健在な場合、侵攻してくるのはアメリカです。そして輸送路は東南アジアからの短い距離でそれ以外は英国に頼めばよいのです。つまり帝国海軍とは日英同盟が健在な状況において能力を発揮する艦隊だったのではないか、そう思えます。

結果を知るものからすると驚くような結論ですが、艦隊計画が人間と同じように数十年単位で図るべき子育てのようなものだとすると納得がいきます。それに組織論から言っても当時の政治・陸軍・海軍の連帯は皆無でまともな統合戦略など持っていません。そうであるならば海軍が日英同盟から永遠と同じ戦略で艦隊計画を練ってきたのも納得がいきます。

無論そんな御託を並べずに手っ取り早く説明する事もできます。つまり外洋艦隊を作るには金と支配している海洋通商路が必要だったが、東南アジア・アメリカ大陸の市場から切り離された日本にはそんなものはなかった、ということです。

 

かなり脱線しましたがアメリカ海軍が中部太平洋から進撃すべきだと考えていました。

史実ではこの2つが同時に進行しました。それでもこれが敗北とならなかったのは、アメリカが強力だったからです。正しかったからではありません。ドイツで言えばウクライナとモスクワへの進軍を両方成功させただけの兵力を揃えたような物です。いやイギリスとソ連侵攻かな?

なにもアメリカの国家指導層は問題にしなかったわけではありませんが、マッカーサーが太平洋戦争の緒戦において唯一善戦した将軍である事が問題でした。国民の英雄だったわけです。彼が主張するフィリピン侵攻を見過ごすわけにもいきませんでした。

まあともかく軍部がこんな感じだったからソ連参戦までのこのことフィリピンの樹海で戦うはめになったのです。満州国とフィリピン。いや中華市場とフィリピンの取引です。部が悪すぎます。

なんとしてもこれを是正しなければなりません。

直接的でもっとも簡単なのはパイプ男(マッカーサー)に死んでもらうことです。彼がコレヒドール島を脱出するときに日本の駆逐艦にでも見つけてもらいます。

心配ならルーズベルト氏にも早々に退席していただき、ヤルタ会談ではバリバリの反共主義者であるトルーマン氏が大統領になっていることにしましょう。

そして統一された戦争指揮の下アメリカは中部太平洋をひた走ります。戦略爆撃も不経済ですのでやめましょう。大陸国家であるドイツには有効かも知れませんが、海洋国家である日本を倒すには海洋通商路を遮断するのが一番効率的です。だいたい戦後日本の復興資金はアメリカが調達しなければならないのですからやめるのが一番です。

大規模陸上戦などしなくても海上兵力で圧倒してしまえば良いのです。飛び石作戦は有効でしょうね。

そして最後は運命の沖縄に上陸し、これを支配してしまえば太平洋戦争は実質的に終了です。

 

さてさてここまで書きましたが、なにも日本が無条件降伏する必要はありません。彼らが中華大陸と東南アジアを明け渡すならば条件付講和で問題ありません。武装解除すら必要ないかもしれません。寧ろ、戦後の共産主義者たちとの戦いを考えると日本の軍事力があった方が良いでしょう。

日本人たちが講和条件で悩んでいた皇室の存続も認めてやりましょう。なにもこれを連合国全てで公表する必要はありません。内密にアメリカ合衆国だけで認めてやるのです。

そうすれば問題はなにも発生しません。日本人たちはもしかしたら沖縄以前に海軍力が払底した段階で降伏する可能性すらあります。そうすると皆さんの大好きな大和が生き残ることが可能となるでしょう。

この皇室存続を認めることは重要なフラグです。核弾頭も戦略爆撃も行わないため日本人に対する精神的打撃が少ないかも知れず、維持になった日本人たちが降伏したがらないかもしれないからです。ならば理性に働きかける必要があります。

まあ餓死者が出ればどんな国家機構、特に工業国家は揺れ動きますからあまり心配ないと思われますが念のため。

フラグ回収は「全ては反共のため」、とトルーマン大統領が考えてくれるなら可能です。

恐らく以上のような歴史犯罪で3ヶ月の早期講和は達成ができるのではないでしょうか?これでソ連参戦を阻止できます。

戦略爆撃機の予算を潜水艦と艦隊に投入すれば効果は寧ろ高まり、日本海の海洋通商路を遮断することも夢ではありません。当時から食料自給率が半分以下の日本なら餓死者すら出ているでしょう。近現代国家としては崩壊しています。

かくして太平洋戦争は終結します。戦略爆撃もないため日本人の戦死者は多くが軍人でしょう。またアメリカンボーイズの戦死者はさらに低いものとなります。史実よりはよほどクリーンな戦いとなるでしょう。

 

時間犯罪の集大成と言うべき戦後のアジアを見てみましょう。特に中華大陸。ここをアメリカの市場にするために今までわざわざ書いてきたのです。

満州国ですが当然ながら崩壊しません。なんやかんや言ってもアメリカもまた中華大陸の市場を手に入れるために戦争してきたのです。日本が降伏したのならすぐさま治安維持と称して満州国に兵力を送り込みましょう。

史実におけるソ連による満州地方の国民党返還がアメリカの圧力であることは間違いありません。アメリカは国民党を介して中華市場を手に入れようとしてきたのですから。

ですが、今回は自分たちで手に入れてしまいました。お節介な正義の味方としても有名ですが、政商として有能なアメリカ人はすぐにこの国を存続させることこそが自分たちの利益になることに気がつくでしょう。解体するなど持ってのほかです。

中華国民党には武器援助などをさらに行う事を約束して宥めましょう。国民党は暗い感情をアメリカに抱くでしょうが現実主義者の蒋介石は少なくとも中華共産党を打倒するまでアメリカの援助を必要とすることで納得するでしょう。

無論、中華共産党やソ連がなにを言ってきても無視します。

ここで新たなバタフライ効果が発生します。中華共産党に策源地が手に入らない事です。さらに日本軍の兵器も手に入りません。

つまり中華共産党単独では中華国民党を倒す事は恐らく不可能でしょう。そのためソ連の援助を必要とし、これが発端となってこの世界において朝鮮戦争の代わりとなる冷戦最初の代理戦争が中華大陸を舞台とします。

これによってアメリカの21世紀における敵対者として浮上する漢民族は疲弊すること間違いなしです。代理戦争となれば中華国民党が全て海に落とされると言う事態も発生しないでしょう。そのため台湾は独立国になるか日本領として存続することになります。

結論として漢民族は満州国、国民党、共産党に3分割されるわけです。なんとも素晴らしい未来ですね。あ、それとこの代理戦争(中華戦争?)は朝鮮戦争なんて目じゃない特需を日本にもたらすでしょう。なにせあの人口をもつ地域の戦争です。軍需だけで日本の景気を回復させるどころか拡大させること間違いなしです。アメリカの技術提供なんて無くても余裕で発展できます。

この世界の満州国でこそGHQが作られるでしょうね。満州国は共産主義からの防波堤として機能し、巨大な陸軍を有するようになります。東洋のドイツと言ったところでしょうか。しかも立憲君主制なので政治的安定性は高いです。

 

日本領として存在した大韓民国は恐らく独立するでしょうが、分断国家でもなく冷戦の最前線にもなりません。むしろ中華戦争では近隣の工業国家として戦争特需を味わう立場にあるわけです。満州国が存続するため資源供給源も問題ありません。また日本の資産なども正常運用されるので経済混乱も起す事は無く、早期復興した日本からの投資が舞い込むでしょうから万全です。

その後も日本からの投資と満州国からの資源、そして緊張の続く中華大陸と言う3つの要素がある限り大韓民国の繁栄は確実です。

恐らく21世紀に突入したころには人口40005000万の欧州列強1国に匹敵するだけの国力を持った有力国家になるでしょう。

なおここで少し記述しますが、おそらくこの世界の朝鮮民族は反日にはならないのではないか、と思います。史実における朝鮮民族が反日になったのは本来あるべきだった朝鮮と、分断国家となった朝鮮、その違い故に反日になったと考えます。

日本・朝鮮・満州と言ったトライアングルが完成され、これが維持されたならば朝鮮はイタリア並の工業国となりえます(意外と知られていませんがイタリアは良い工業品を作るとしてちょっと有名)。人口・資源・地政学から言って間違いないでしょう。

ですが史実ではそうはなりませんでした。分断国家となり2000万ほどの小国です。これは極論するならば日本が負けたからです。この責は間違いなく日本にあります。

日本が朝鮮を併合した時、日本は彼らに繁栄を約束しました。バラ色の未来を見せたのです。彼らはその実現に努力しました。朝鮮民族が太平洋戦争にどれほど協力を惜しまなかったかは、特攻隊員の名前に朝鮮民族を見つけられることなどからもわかります。

そして日本は敗北します。彼らが反日になったのは必然です。日本は確かに期待を裏切ったのです。

精神とは環境が作り出します。分断国家、冷戦の最前線といった環境は民族感情を歪めるのに十分でしょう。

日本が漢民族を思った時に、さまざまな複雑な気分を抱くことに似ています。確かに日本の文化などは中華大陸発祥の物が多く、学ぶ点もあります。ですが彼らを大国として認めることに抵抗がある。

それは漢民族が大国として伸し上がらないようにすること自体が日本人にとってDNAに刻まれた本能に近いものだからです。これは海洋国家として当然と言うべき感情でしょう。

言ってしまえば史実の中国が大国として21世紀に突入することは日本が海洋国家として大陸国家の分断に失敗したことの結果だからです。失敗例を突きつけられて良い顔をする人間なんていません。

反日への裏返しと言えるような安易な朝鮮蔑視に私は同意できません。反日と現在の境遇に追いやったのは間違いなく日本だからです。

 

脇道にそれましたが続きに行きたいと思います。

この世界では東南アジア諸国もかなり幸福な状態になっているでしょう。

例として挙げられるベトナムですが、アメリカも悪夢の代名詞であるベトナム戦争を味わう必要がなくなるでしょう。

なにせドミノ理論の終着点に居る日本が東南アジアの良港を有する沿岸地帯での動向を見逃すはずがありません。なによりこの世界での日本は軍事力を持って独立しています。そして経済は大変な好調で国民の間で共産主義が蔓延る隙間がありません。

この場合、ベトナム戦争を味わう可能性があるのは寧ろ日本です。まあ時たま発揮する場当たり的な成功を持ってホー・チ・ミンを政府首班として認めてしまうのが適当でしょうね。共産主義者にして現実主義であり骨の髄までの民族主義者のホー・チ・ミンなら中華共産党からあっさりと日本に鞍替えするのに躊躇などしないでしょう。

その後に漢民族どちらかの国が進軍してくるかもしれませんが、これも日本の支援があれば乗り切れるでしょう。日本が異様にベトナムに肩入れするのは百年の計である漢民族分断を続けるためです。太平洋戦争以前に仏領インドシナに軍を送ったのは中華大陸を牽制するためだったのですから、戦後になってもベトナムを重視するのは当然です。

恐らく日本からの投資によってベトナムは東南アジアの中核国として発展していくでしょう。

なお、ここでも少し、民族感情について書きたいと思います。

史実におけるベトナムは反日でもなく反米でもない事で好意的に見られることが多いですが、これはある意味間違っています。

なにもベトナムが日本やアメリカに感謝しているわけでもないからです。太平洋戦争時に200万余りのベトナム人が餓死したことはそれなりに有名なことですし、ベトナム戦争時にアメリカがかの地で行った蛮行はあまりにも有名です。

それでありながらベトナムが反日でも反米でもないのは民族的伝統累々というよりも、ただ単にベトナムの地が中華大陸を牽制するために絶好の位置に存在する、という歴史的事実に裏付けられているからにほかなりません。

漢民族は自分たちの土地を守ろうとベトナムに干渉してきますから、ベトナムはほとんど常に漢民族と対立状態にあるのです。まさしく大陸国家とその周辺国の関係と言えばそれまでですが、間違いようのない事実です。

そしてベトナムは海洋勢力によって中華大陸牽制に使われました。フランス・日本・アメリカ、代は変われベトナムが欲せられるのは中華大陸牽制のためでした。

そしてそれはベトナムにとっても自国生存のために必要なことでした。単純な国力差であれば漢民族に併合されかねないからです。

ここまでくれば理解できるかと思いますが、ベトナムが反日反米ではないのは、その前に漢民族との対立に忙しく日本やアメリカに構っている余裕がないからです。

朝鮮と違う点は分断国家ではない事と、文明的に遅れていたことでしょう。また冷却期間のある・なしの違いも大きいかと思います。

太平洋戦争、ベトナム戦争の後に海洋勢力がベトナムの地から一時的に一掃されたため、国際的に孤立した期間がありました。

彼らはそこで最大の敵対者が誰かを再確認することが出来、感情を整理する余裕があったのです。

たまに日本がベトナム人200万人を餓死させたことを軽く見る意見が存在しますが、それは例えばアメリカ合衆国が戦略爆撃と核弾頭で日本を吹き飛ばしたことを軽く見るアメリカ人の意見を日本人が聞いた時と同じぐらいにベトナム人にとっては釈然としない事なのです。

 

さてさてこの仮想史における戦後の日本です。これを楽しみにしていた人も居るんじゃないでしょうか。この仮想史の日本は史実よりも素晴らしい条件に見舞われています。

まず条件付講和なので海外資産などは没収されずにそのままです。そのため驚異的なインフレにはならないでしょう。また満州・朝鮮半島が市場として維持されているため経済も回転を続けられます。

なにより大きいのが本土の社会資本が破壊されていない事です。資源さえ手に入ればすぐに工業国家として息を吹き返します。その代わりアメリカの援助はないでしょうが問題ありません。

軍事力も変な憲法で縛られないため国力並みに保有する事となるでしょう。正規空母34隻と言ったところでしょう。もしかすると核爆発が起きない世界なので原子力空母かもしれません。そうするとさらに原子力潜水艦もセット配備されるわけで訳ですな。もちろん核弾頭なんて物騒で役立たずを配備することになりますが。

日本が中心となって満州国・大韓民国・ベトナムなどを集めてアメリカと太平洋条約機構なんて軍事同盟が設立されるかもしれません。

あ、それとこの世界の日本では超高齢化社会にもならずバブル経済も発生しない可能性があります。

なにせ人口学的にこれらは団塊世代、つまり戦後人口バランスが崩れたために生まれた子供たちによって発生した事なので、戦死者が少ないこの世界の日本では人口学的には発生しないからです。

寧ろ人口は寸胴型になる可能性があります。戦中の死者が軍人中心であり、また戦後において史実とは違い中華大陸を市場として使えるため息の長い好景気を味わえるからです。

結果的に西の中華大陸、南に東南アジア、東にアメリカ大陸とアクセスできる市場は全て使えることになります。無いのは資源地帯であるシベリアだけで、それも市場として存在するわけではありませんし、21世紀近くになって資源が逼迫するまでオーストラリアから手に入る資源だけでも使いきれない量になりますから問題ありません。

素晴らしき世界というわけですな。

 

なにか日本ばかり得な状況でアメリカにとって利益があるの?、と首を傾げる人も居るかも知れませんな。ですがアメリカにとって利益ありまくりです。

恐らく軍事予算は史実よりも23割も低い数字で勢力圏を維持できるでしょう。なにせ海軍力を日本に、陸軍兵力を満州国と大韓民国が当てにできるからです。寧ろ予算を削減してすら史実よりも強力な西側連合が成立するでしょう。

さらに市場は巨大な訳です。この時間犯罪の目的だった中華大陸は満州国と中華国民党として入手できました。付録として漢民族を3つに分断する事にも成功したので万々歳ですね。

宇宙開発資金も潤沢でしょうから夢物語も作られるかも知れません。20世紀中に対軌道輸送機打ち上げ、なんてね。

冷戦終盤におけるソ連に対する軍拡に使う金は少なくて済みます。その分を満州国や日本がやってくれるからです。

 

 

これがアメリカ合衆国の正しい太平洋戦争の終わり方です。

いかがだったでしょうか。日本の早期敗北という面白いフラグ立てだったと思っています。書いていて思った事は戦前の日本が勢力圏とした所をそっくり確保することこそがアメリカ、いえ海洋国家にとって有利だという事です。

頭にちらついていたのはマッキンダー三日月地帯の地図でした。中華共産党を外せばまさに海洋国家が影響を行使できる地域そのものです。

そのためこの文の別名は「極東アジアにおける海洋国家の勝利」とできるでしょう!